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映画『Away』感想

10日ほど前にアニメーション映画『away』を鑑賞。ブログに書くタイミングを逃してしまって、スルーしようか迷ったけど良い作品だったからやっぱり残しておこう。

 

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あらすじ

 

ある日少年は、木の枝にパラシュートが引っかかっている状態で目覚めた。あたりを見渡すと、人の気配がない不思議な島だ。追いかけてくる黒い影から逃れつつ、拾った地図を手がかりにオートバイで島を駆け抜ける。

 

感想

 

ラトビアの25歳の青年が一人で作ったという本作。創作することの喜びや躍動感が画面に広がる美しいアニメーションから伝わってきて、それだけで胸熱だった。

アニメーションは3DCGで作られている。生きものの動作や重力がかかった動き(果物が手から転がるとか)はリアル寄りではない。しかし嫌な違和感があるわけではなく、なんだか味があってずっと見ていたくなる。

一方、遠くから見た木々や水の描写はリアルだった。一人で作ったとは思えない壮大さである。ポスターになっている鏡の湖のシーンはアニメーションで見るとさらに美しく、息をのむほど。

あと、森の描写にゼルダの伝説っぽさがある。Switchのブレスオブザワイルドでただ散歩するのが好きだった人は、絶対に本作の世界観にハマる。

少年が黒くて大きな影から逃れながら、オートバイで島を駆け抜ける。川が流れる豊かな森、広い草原、鏡のような湖や吹雪が叩きつける雪原など、様子の違ういろんな場所が登場する。そして場所ごとに物語のパートが切り替わる。

全篇にわたってセリフは無く、それゆえ主人公が何を考えていてどんな状態なのか説明されることはない。物語をどう受け取るか、観客の想像に委ねられている感じが心地よかった。

黒い影は少年を追いかけて飲み込もうとする。飲み込まれた動物は眠りにつくように命を失っていく。この黒い影は「死」そのものだ。

面白いと思ったのは、飲み込まれた生きものは苦しみながら死ぬのではなく、穏やかに命を失うという設定だ。黒い影の内側は、あたたかくて心臓の鼓動が聞こえる、胎内のような場所になっている。

少年は食べ物も水も少ないし、一人で必死に駆け抜けている。はたから見ると、黒い影に飲まれて眠るように命を失う動物より、生きている少年の方が苦しそうである。

しかし彼は諦めない。そして前に進んでいるうちに、一緒に旅をしてくれる動物や素晴らしい景色に出会う。

本作は色んな捉え方ができて、寓話的な解釈ができる。観賞後に公式ページを眺めていたら、監督が「Awayは私にとって非常に個人的な映画」とコメントを載せていた。そのコメントを見て、監督にとって黒い影は「死」ではなく「諦めること」なのかもなと考えたりした。

 

おわりに

観終わるころには、生きるって苦しいし辛いけどやっぱ美しいなって思える。あと単純に一人でこの映画作ったのか!って何度も驚くこと必至なので、創作意欲をかき立てられたい人にもおすすめです。