『フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義』──代替肉はどうなってゆく?
『フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義』は、食におけるテクノロジーの現在と未来を論じる本だ。もとは日経で連載されていた記事を再編集したものらしく、わりとビジネス的な視点が強い。今現在、培養肉や植物性の肉が世界でどれくらいメジャーになっているのかを知りたくて手に取った。
自分は可愛いと認識する生きものはペットとして可愛がる一方で、家畜の肉は食べることに矛盾を感じていながらも目を背けているなと感じることがときどきある。
しかし肉を食べないとなると現実的な問題もある。外食といえばだいたい肉食が含まれる現代日本で肉を食べない生活は難しすぎるし、肉食をやめるとタンパク質・鉄分が取りづらくなる。
逆にいえば外食の店で植物性や培養肉の選択肢があればそっちを選ぶし、タンパク質や鉄分がそれらから摂れれば今のかたちの肉はほとんど食べなくなるだろうとも思っている。
体感として、現在代替肉は身近なところでいえばバーガーショップが植物性ミートのバーガーを販売しているくらいで、日常に浸透しているとまでは感じられない。環境への意識が強い欧米だともう少し浸透しているらしい。日本でも流行の兆しは来つつあるし、2、3年後には当たり前になっていたりするのだろうか。
フードテックという括りなので、代替肉以外にも色々な食関連のテクノロジーが紹介される。調理の補助をしてくれるキッチンOSや、フードロボット、店舗を持たないゴーストキッチンなどが挙げられていた。
世界的にはこれからは時短だけでなく、料理すること自体を楽しんだり家族で団欒する場としての料理テクノロジーが進化してゆくとの指摘が興味深かった。
日本ではまだ料理は義務的かつ「女が主体でするもの」という意識が根深くて、家族でリラックスするための料理からはほど遠い気がするけど。
あと今のままでは労働時間が長くて料理を楽しむ時間がないのではとも思う。社会的な意識を変化する方向にも動いていかなければ結局日本は出遅れるだろうな・・・・。
ほかにはミシュランで星獲得したシェフであり積極的に料理にテクノロジーを取り入れている、米田肇さんのインタビューが面白かった。ミラノデザインウィークというデザインの祭典で、空間芸術と料理のコラボレーションをしたというお話。
雨の映像が流れる空間で口の中ではじけるポッピングシャワーキャンディを食べてもらい、雨の雫を体感してもらうしかけを作ったり、ラーメンのスープを太古に地球に大雨が降って植物プランクトンが生まれる過程の海にたとえたり。
考えてみたら味覚が融合する芸術やエンタメってあんまりない。パソコンの中には音も映像も音楽も写真も入っているのに味は入っていないし、ネットの通販やレストラン検索で「味見ボタン」はない。味というものを当たり前にその他の感覚と切り離してしまっている自分に気付いたりした。
おわりに
代替肉にも大まかに植物性の肉と培養肉(動物の細胞を培養して作る肉)があり、自分はもともと培養肉の方に興味があった。培養肉って響きがもう近未来的ですごいワクワクする。今現在作られてはいるけど、コストがかかりすぎてハンバーガーひとつに何百、何千万円かかるらしい。ヒェ・・・・
代替肉は現実的な問題としても興味があるけど、SFというか近未来的な面白さとしてもそそられる。代替肉が身近にある未来、楽しみだなー。