部屋の隅で映画と本

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マナーはいらない 小説の書きかた講座

 

『マナーはいらない 小説の書きかた講座』は、小説家・三浦しをんによる小説の書き方を紐解く一冊だ。

かっちりと小説の書き方を説明していくというよりは、エッセイと小説の書き方本の中間のような読み口だった。

三浦しをんファンは読まない手はない。彼女が何を考えてどう書いてるのかを知ることができるし、エッセイとして楽しむこともできる。

ファンでなくとも、小説を書いてみたいけど何をどうしたらいいか分からない人にはおすすめだ。

逆にもう何度も小説を書いている人だったり、色んな書き方本を読んでいる人にとっては特に目新しさはないかも。

 

自分は数年前に小説を書いてみたことがあった。書き方本は読まずに小説のセオリー的なものは全く知らない状態で。

いざ書いてみると頭の中に浮かんでいる映像をまったく文章に落としこめないし、出来上がったものが面白いと思えず、小説を書くには圧倒的な読書量とある程度の才能が必要なのだと決めつけてすぐにやめてしまった。

今考えるといきなり補助輪なしで自転車を漕ごうとするようなものだった。本書のような書き方本を読んでから書けば良かったのだね。小説を書きたかったら絶対に読んだ方がいいとまでは思わないが、ハウツーを知識として知っているのは心の頼りどころになると思う。

 

たとえば自分が小説を書くときにモヤモヤしていたのは、すごく基本的なことだけど人称について。

第三人称で書くとして、地の文で書いて良いのは主人公の気持ちだけなのか、その他の人物の気持ちも書いていいものなのか?

読む側のときは全く意識しないことだが、実際に描いてみるとけっこう迷う。

この疑問がスッキリした。ひとくちに三人称と言っても二種類あるらしい。三人称単一視点と三人称多視点と呼ばれる。

三人称単一視点が現代のエンタメ小説の主流だという。一人の人物にカメラを固定して、基本的にはその人の目に映るものを描写する。断定的に書けるのはその人の心情のみだ。

三人称多視点はカメラを特定の人物に固定させず、特に制約なく描く方法。一見こちらの方が書きやすそうだなと思えるかもしれないが、けっこう難しい書き方らしい。主語が多くなりがちで洗練されてないように見える。

 

表現力を身につける方法として紹介されていた、文章のデッサン練習は小説を書いていなくてもブログや日常でも役に立ちそう。

普段の生活で感じたことや目や耳にした出来事や風景を、脳内で文章にするという方法。散歩しているときに試しにやってみたらこれが案外難しくて頭を使う。

 

読んで理解できる語彙の中と自分で自由に使うことができる語彙って別物なのだなあとブログやらを書き始めて実感していたので、文章のデッサンを続けて自由に使える語彙を増やしていきたいところ。