部屋の隅で映画と本

部屋の隅で映画と本

映画と本の感想ブログ

MENU

マナーはいらない 小説の書きかた講座

『マナーはいらない 小説の書きかた講座』は、小説家・三浦しをんによる小説の書き方を紐解く一冊だ。 かっちりと小説の書き方を説明していくというよりは、エッセイと小説の書き方本の中間のような読み口だった。 三浦しをんファンは読まない手はない。彼女…

2021年に読んだ本ベスト5冊

2021年に読んで良かった本を5冊紹介します。書こう書こうと思いつつ、いつの間にか年が明けていた・・・・ 2021年は51冊読みました。冊数は去年とほとんど変わらず。だいたい寝る前に1時間ちょっと読むルーティーンなのでこんなものかな。 今年読んだという括り…

『フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義』──代替肉はどうなってゆく?

『フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義』は、食におけるテクノロジーの現在と未来を論じる本だ。もとは日経で連載されていた記事を再編集したものらしく、わりとビジネス的な視点が強い。今現在、培養肉や植物性の肉が世界でどれくらい…

『文字禍・牛人』──ハッとしてゾッとする、エンターテイメント性の高い一冊

『文字禍・牛人』は、中島敦による6篇を収録した短編集だ。表題の「文字禍」「牛人」のほかに、「狐憑」「木乃伊」「虎狩」「斗南先生」が収録されている。 関係ないが、ここ一年くらい某バレー漫画にハマっている。基本的にずっとバレーをしているだけなの…

『人新世の「資本論」』──資本主義でも社会主義でもない社会を考える

『人新世の「資本論」』は、マルクスの文献から、現代に通用する資本主義以外の新たな選択肢を追求する本だ。マルクスといえば資本論が有名だが、資本論だけでなく新しく発見された文献も含めて語ることで、新たなマルクス像の提示を試みる本でもある。著者は…

『持続可能な魂の利用』──ある日「おじさん」が見えなくなったらどうなる?

少女たちから「おじさん」が見えなくなったら、社会はどうなるのか?松田青子による『持続可能な魂の利用』は、ある日突然少女たちの目の前から「おじさん」が消えた世界を描いた小説だ。 本書では、「おじさん」が見えなくなった未来で、「おじさん」が見え…

『坊っちゃん』──勧善懲悪みの強い夏目漱石の初期作

『坊っちゃん』は、夏目漱石による二作目の小説だ。名の知られた作品が多い彼の著作の中でも、おそらく一、ニを争う有名な作品だろう。 自分が読んだ夏目漱石の小説はこれで三冊目。『こころ』『彼岸過迄』を読んでかなり好きだと気づき、次は代表作(有名す…

『大学4年間の社会学が10時間でざっと学べる』──レジュメのような読感だが一冊目には良いかも?

『大学4年間の社会学が10時間でざっと学べる』は、題名のとおり大学で学ぶ内容の社会学についてざっと解説する一冊だ。 以前『100分de名著』で社会学者ブルデューの『ディスタンクシオン』という本が紹介された回がとても面白くて、社会学ってどんな学問なん…

『シラノ・ド・ベルジュラック』──ラブレター代筆系物語の元祖

エドモン・ロスタンによる『シラノ・ド・ベルジュラック』は、1897年にパリで初演を迎え、以降現在にいたるまで世界中で上演されている戯曲である。 去年秋にシラノ・ド・ベルジュラックの作者であるロスタンを主人公にした、『シラノ・ド・ベルジュラックに…

『台湾物語: 「麗しの島」の過去・現在・未来』──台湾愛を感じる一冊

『台湾物語』は、近現代台湾の歴史、言語、文化、宗教など、さまざまな方面から台湾を語る一冊だ。なんとなく小説っぽさもあるタイトルだけど新書の本である。 文章が固くなくて、とてもソフトな読み心地なのが印象的だった。近代中国の文学には「雑文」とい…

『彼岸過迄』──結論が与えられない物語の美しさ

『彼岸過迄』は、夏目漱石の後期三部作と言われるうちの一冊だ。 実は高校を卒業したころに買ったきり、しばらく本棚の肥やしにやっていた。高校の教科書に載っていた『こころ』が好きで、別作品も読んでみようと思って買ったのだと記憶している。 しかし、…

『遺伝子 ──親密なる人類史』──鮮やかなストーリーテリングに引き込まれる一冊

医師・がん研究者シッダールタ・ムカジーによる『遺伝子 ──親密なる人類史』は、遺伝学がどのように発展してきたかという道筋を、著者自身の家系に潜む遺伝的な精神疾患の話を織り交ぜながらたどる一冊である。 上巻ではメンデルのエンドウマメの実験までさ…

お久しぶりの更新 アンド『華氏451度』感想

久々にブログを開いてみたら、もう7ヶ月くらい更新してなくてびっくりした・・・・。最近書いてないなーとは思っていたけど、せいぜい3ヶ月くらいだと思っていた。時の流れが早すぎる。 ブログを書いていないあいだ何をしていたかというと、とあるバレー漫画にど…

『脳はすこぶる快楽主義』──パクチーを美味しく感じるかは遺伝子によって決められていた?人体の不思議にせまる科学エッセイ

脳はすこぶる快楽主義 パテカトルの万脳薬 作者:池谷 裕二 発売日: 2020/10/07 メディア: Kindle版 『脳はすこぶる快楽主義』は、東大教授で脳研究者である著者・池谷裕二が、学術論文によって発表された脳や遺伝子にまつわる科学的発見をピックアップして、…

2020年に読んで良かった本ベスト5

今さらながら、2020年に読んだ52冊の中から良かった本を5つ紹介します! ジャンルさまざまで順不同に挙げていきます。 サピエンス全史 サピエンス全史(上) 文明の構造と人類の幸福 サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福 作者:ユヴァル・ノア・ハラリ 発…

『21世紀の啓蒙』──啓蒙主義はいまこそ必要とされている

進化心理学者スティーブン・ピンカーによる『21世紀の啓蒙』は、啓蒙主義について21世紀の言葉と概念でふたたび語りなおし、社会は理性と科学によっていかに進歩を遂げてきたかを解き明かす一冊である。 上巻では、そもそも啓蒙主義とはなんなのかについて説…

『菊と刀』──現代まで受け継がれている日本文化の型とは

『菊と刀』を読んだ。アメリカの文化人類学者ルース・ベネディクトが日本の文化の型を分析した本で、1946年に刊行された。 ここ半年くらいは色んな国の文学や教養系の本を読むことが多かった。日本以外の各地域について読むにつれて、じゃあこれって日本では…

『動物農場』──権力の暴走を見逃した動物たちが向かう先

1945年に刊行されたジョージ・オーウェルの小説『動物農場』を読んだ。本文が150ページちょっとしかないのに、短編小説とは思えない内容の濃密さ。読み進めるごとに真綿で首を絞められていくような苦しさがある。ハヤカワepi文庫の訳はおとぎばなし風な文体…

『銃・病原菌・鉄』──世界の格差はどこから発生したのか

世界の歴史をたどると、富とパワーが世界各国に平等に分配されていたことはなく、つねに少数の地域に集中していた。現代では、アメリカや欧州、中国がリードしている状態が当たり前になっていて、現状に疑問を持つことはあまりない。 しかし、考えてみると不…

『一杯のおいしい紅茶』────ディストピア小説の金字塔、ジョージ・オーウェルの意外な一面

ディストピア小説『一九八四年』や『動物農場』で有名なイギリス人作家、ジョージ・オーウェルのエッセイ集。おもに晩年である1945年〜1948年に書かれたエッセイが集められている。 題名になっている『一杯のおいしい紅茶』は、本を開いて一番はじめに載って…

『82年生まれ、キム・ジヨン』──地獄のごった煮から救いは生まれるのか

書籍のほうの感想。韓国の作家であるチョ・ナムジュの作品で、韓国で100万部を突破したベストセラー。 33歳のキム・ジヨンは、まだ幼い娘のチョン・ジウォンと3歳年上の夫との3人暮らしだ。彼女は広告代理店で働いていたが、育児を自分ひとりで行わなければ…

『思考の整理学』──30年以上読まれ続ける不朽のエッセイ

「考えること」に関する外山滋比古のエッセイ。1980年代に発売されて以来、ロングセラーを記録している。東大・京大で1番読まれた本というコピーでも有名である。 実業家であったり、色んなジャンルの著名人の愛読書としてもよく紹介されているので、なぜ発…

『一人称単数』──自伝的ともいえるフィクション小説

村上春樹の短編集。題名のとおり、一人称「僕」「私」の語りで進行して、名前が明かされることはない。(「ヤクルト・スワローズ詩集」には、「僕」=村上春樹 だとわかる箇所があるが。)ただ、すべての短編の「僕」は村上春樹なのではないかと思えるくらい…