部屋の隅で映画と本

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『シラノ・ド・ベルジュラック』──ラブレター代筆系物語の元祖

 

エドモン・ロスタンによる『シラノ・ド・ベルジュラック』は、1897年にパリで初演を迎え、以降現在にいたるまで世界中で上演されている戯曲である。

去年秋にシラノ・ド・ベルジュラックの作者であるロスタンを主人公にした、『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』という映画を観たのがきっかけで初めて戯曲を手に取った。

創作において鉄板である、ラブレターの代筆を頼まれ、代わりに手紙のやりとりをするうちに関係性が変化する・・・・というストーリー展開の元ネタがこの『シラノ・ド・ベルジュラック』だと知り、がぜん興味が湧いた。

最近のラブレター代筆系映画といえば、ネットフリックスで配信されている『ハーフ・オブ・イット』だ。現代ではもうラブレター代筆という題材が擦られまくったのと、ラブレターで告白するというシチュエーションの現実味が薄くてなかなか制作が難しそうであるが、うまく現代的にアレンジして成功していた。

自分が本書を読んだのはもう10ヶ月近く前のことなのだが、は2020年は『ハーフ・オブ・イット』と『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』の他に、NTVの『シラノ・ド・ベルジュラック』(イギリスで上演された演劇を映画館で流す企画)も年末に上映していて、なぜか去年の日本はシラノイヤーだった。


物語は、鼻が大きくてモテないが美しい詩を書く才能がある軍人シラノ、イケメンだが軽薄で詩の才能はないクリスチャン、美しく気品のあるロクサーヌが繰り広げる三角関係だ。少女漫画の古典か?と思うくらい馴染みのある人物関係の設定。

クリスチャンはロクサーヌに恋するものの、詩の才能がないためシラノに手紙の代筆を頼む。当時はいかにロマンチックで詩的なことを言えるかがとても大事であり、イケメンなだけでは恋愛関係をうまく運ぶのは難しいようだ。

シラノもロクサーヌが好きなのだが、肝心のロクサーヌの方はクリスチャンが気になっていると知り、二人の恋を成就させるために代筆を引き受ける。

最初は3人とも外見の美しさに熱を上げるライトな恋愛関係だ。しかし物語が進むにつれて相手の内面を愛しはじめる者、やっぱり外側だけを見て軽い恋愛がしたい者と、差が出てくるのが面白い。

物語的な面白さは第四幕が一番だった。クリスチャンは、ロクサーヌが自分ではなくシラノを愛しているのだと悟る。

クリスチャンは悟ったのちに、気付かぬふりしてそのままロクサーヌと関係を進めたり、うまく事を運べなかったシラノに怒ったりするのではなく、ロクサーヌが愛しているのはあなただとシラノに伝える。当て馬役が最後に良いやつになって退場するという概念としての少女漫画ムーブ・・・・。

夜の暗闇のなかバルコニーで、クリスチャンの代わりをしたシラノがロクサーヌに美しい愛の詩をならべる名シーンは、切なくロマンチック。実際に劇で観たらテンションあがっちゃうだろうな。

 

 

 


映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』はこちら。全く『シラノ・ド・ベルジュラック』を知らない状態で観たがドタバタ劇として面白かった