部屋の隅で映画と本

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『思考の整理学』──30年以上読まれ続ける不朽のエッセイ

「考えること」に関する外山滋比古のエッセイ。1980年代に発売されて以来、ロングセラーを記録している。東大・京大で1番読まれた本というコピーでも有名である。

実業家であったり、色んなジャンルの著名人の愛読書としてもよく紹介されているので、なぜ発売から30年以上経った今でも評価されるのか気になって読んだ。

ひとつひとつの話が5〜6ページで構成されていて、スキマ時間に読みやすい。文章にしても、理解の手助けになるたとえ話を使っていたり、論理に一本筋がとおっていてよくまとめられているので中高生にもわかりやすいのではないかと思う。

 

考えること・創造することにたいしての道すじを示してくれる。また、実際にどうやってアイデアを整理しているかという具体例を出してくれたりもする。それらの具体例をうのみにするというよりは、合う合わないを確かめて心にとどめておくのがいいかもしれない。やってみて合わなかったと知ることもある。

p22「朝飯前」の章で著者は、朝早くに起きて、朝食をとる前に仕事をする。そして朝昼を兼ねたブランチをとり、ひと眠りすると頭がよく働く、と説く。

はからずも、これを読んで数日後に実践できる機会があったので挑戦してみたが、自分にはあまり合わなかったようだ。朝起きてから朝食の前にタスクをこなそうとするも眠くて集中できないうえに、ブランチ後にひと眠りして起きたあとは時差ぼけしたように顔が火照って頭が働かなかった。根っからの夜型だから当然といえば当然なのだが。アドバイスが全て自分に合うわけではないのだなと気づくことができたし悪くない経験だった。

 

とくに印象的なのは、p54「触媒」の章。ここでは、新しいことを考えるのにおいてすべて自分の頭から絞り出せるとは思ってはならないと述べる。無から有を生ずるような思考などめったに起こるものではなく、すでに存在するものを結びつけることによって新しいものが生まれるという。そうなると、創作者の役割とはなんなのか。それは、個性が立ち会わなければ決して化合しないようなものを化合させるというところにあるのだ。

これには、なんというか頼もしさを感じた。漠然となにか生み出せるようになりたいと考えていると、誰も見たことのないものじゃないと、とか勝手にハードルを上げて勝手に押しつぶされてしまう。でも、たとえばなにかの創作物にたいして考えたことや感じたことを書くのだって、一度自分というフィルターを通した時点で生み出したといえる(すくなくとも生み出すための訓練にはなっている)んじゃないかと。

 

現在でもこの本に書いてある数行の内容を、一冊使って書いているビジネス書がよくあるなと読んでいて思った(本作は概念的な話がおおくて抽象度が高いため、具体性のあるビジネス書とはまた種類が違うが)。それくらい、思考するうえで普遍的に役に立つ心構えが散りばめられていて、ロングセラーなだけあった。あと個人的に昔っぽい感じのフォントが好き。

 

 

 

思考の整理学 (ちくま文庫)

思考の整理学 (ちくま文庫)