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映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』感想

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映画『シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!』を観た。いつもガラガラな近所の映画館で見たので、観客自分だけかもな〜なんて気持ちで行ったら意外と人がいてちょっと驚いた。


あらすじ

1800年代後半パリ。ほぼ無名の劇作家であるエドモン・ロスタンは、スランプに陥って脚本が書けずにいた。ある日、友人であり大女優のサラ・ベルナールが、俳優のコンスタン・コクランに口をきいてくれると申し出る。劇作家として復活する千載一遇のチャンスであるものの、コクランが提示した条件は「今から3週間後に上映を始める」というものだった。まだ一ページも書けておらず、慌てるエドモン。時を同じくして、友人であり俳優のレオから、ラブレターのアドバイスを求められる。最初は仕方なくだったが、代筆をするうちに次々と脚本のアイデアが浮かんできて、現実と劇がリンクしてゆく。劇の脚本とエドモンの心はどんな結末を迎えるのか──。

 

感想

実在した劇作家エドモン・ロスタンが、フランスで有名な戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」を書き上げるまでの、実話に着想を得た話。

テンポよく物語が進む。戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」の内容については、観ているうちに大筋が分かる親切設計だ。ただ疾走感があるぶん、なんでそうなるの?と気になる点やご都合展開に感じる部分があるのは否めない。娯楽コメディとして、ちょっとした荒さはスルーして観るほうがストレスがないかもしれない。

エドモンはレオの好きな人であるジャンヌと、レオのふりをして文通をする。文通が続いていることは、なんとレオ本人にも隠している。手紙の上で繰り広げられる詩的なやりとりが、エドモンにインスピレーションをもたらして、「シラノ・ド・ベルジュラック」の脚本に反映されていく。劇に出演しているレオと衣装係のジャンヌは、第一幕、第二幕と劇が完成に近づくにつれて、エドモンが手紙のやりとりをしていることを知るのだ。

情熱的だが文章を書くのが苦手な人の代わりに、知的で文章が得意な人が、好きな人への手紙を代筆する物語は、今では物語の型の一つだろう。最近だとネットフリックスのドラマ「ハーフ・オブ・イット」が手紙を代筆する系の傑作だった。

自分は現代の映画・小説に触れがちなので、古典をもともと知っているパターンよりも現代の映画・小説から古典にさかのぼるパターンが多い。それはそれで、「あの作品はこの古典のこの部分をオマージュしていたのか!」と知る楽しさがある。「シラノ・ド・ベルジュラック」も戯曲がまとめられている文庫本があったので読んでみよう。