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映画『さんかく窓の外側は夜』感想 ──映像や劇伴は良い!のに・・・

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『さんかく窓の外側は夜』を鑑賞。前に原作を読んで面白かったのと、映画のキャスティングが合ってると思って地味に楽しみにしていた。しかし観た結果は・・・・なんかぼんやりした味わいだったなあという印象。

 

あらすじ

書店で働く三角は、幼い頃から霊が視える体質に悩まされていた。ある日、冷川と名乗る霊媒師が現れ、助手にならないかと誘われる。冷川と親交のある刑事・半澤から持ちこまれた連続殺人事件を調査するうちに、人に呪いをかける女子高生・ヒウラエリカの存在にたどり着く。

 

感想

劇伴や映像、役者さんたちの演技がいい。主題歌も雰囲気に合っていて好き。しかし、少なくない巻数の内容を2時間にまとめようとした結果、改変しなきゃいけない設定や時系列が発生してて、なんかしっくりこなさが否めなかった。

私は漫画や小説を映像化する際に、映画を面白くするためのちょっとした設定変更はアリだと思っている。しかし本作においては、なんでわざわざその改変したんだ?と疑問に感じてしまった。

たとえば、キャラクターの性格。主人公の三角は原作だと、霊を怖がってビビりまくる一方、人に対してはサバサバしている。冷川に対しても感情豊かに言いたいことははっきり言うキャラだったと記憶している(漫画読んだのがけっこう前なのでうろ覚えだが)。ヒウラエリカも少なくとも表面上は、元気で明るいキャラだ。

しかし映画だと、双方とも暗くて陰が強いキャラになっていた。自分の考えはあまり口に出さない。なので特に三角は、強引な冷川に巻き込まれてる感が強かった。

原作がシリアスで不気味なストーリーなのに読みやすいのは、キャラクターの性格に軽快さがあるおかげだと思う。映画でも万人受けする要素になりそうなコミカル部分を、なんであえて取り除いたのだろうか。

あとは登場人物の行動原理が読み取りづらい。信頼関係が深まっていない(ように見える)うちから、パーソナルな部分に踏みこまなきゃいけない事件が起こる。一方的に被害者とは言えないシリアスな過去を持つ冷川に対して、出会ってまもない三角があそこまで受け入れられることに違和感があった。そもそもなぜ三角はかなり怪しい冷川の助手になることを了承して、その後ヤバい一面を垣間見ても一緒にいるのかとかも。

他人を説得したり励ます言葉が妙にロマンティックなのも気になる。映画全体に暗くて冷たい雰囲気が漂っているのに言葉だけが熱を持っていて、宙に浮いているように感じた。

 

おわりに

不満点を書き連ねてしまったが、酷評というよりもったいないという感想である。劇伴や映像、役者さんたちの演技など素材はいいのに。

原因を考えると、やっぱり原作の内容をつめこみすぎてしまったことではないだろうか。結果、逆に原作の空気感から離れて、盛り上がりどころもぼやけてしまったみたいな。

というかこの作品は1話1話区切りのある連ドラの方が向いてる気がする。三角と冷川が様々な心霊事件を解決してゆくバディもの、ぜひ連ドラでやってほしいなー。